私のこだわり

2014-08-16 16:11:00

 ルネサンスの時代、イタリアはメディチ家の王女カトリーヌ・ド・メデシスが、お抱え料理人を引き連れて、フランス国王アンリⅡ世に嫁いだことにフランス料理の歴史は始ります。そしてその後フランス料理は宮廷料理として栄えていくことになります。

 

 しかし国王の住んでいたパリという地は、ご存じのように内陸に位置しています。南の地中海や西のノルマンディー海峡からは遠く離れているため、魚介類が届くまでには日数がかかり鮮度は期待できませんでした。

 

 そこで料理人たちは劣化した鮮度と味を補うために、普段は捨ててしまうはずの“魚の骨”や“海老の殻”を再利用し、そこに当時から豊富に作られていたワインを加えて、薫り高い素晴らしいスープを取りました。それをさらに煮詰めてソースとして作り上げ、調理した魚と一緒に食すことにより味と風味を補う方法を見つけ出したのです。これがフランス料理における『ソースの誕生』です。

 

 1700年代後期になるとフランス革命が起こり、貴族制度は廃止されることになります。当然のごとくお抱え料理人たちは職を失い、街に降りてレストランを開くことになりました。彼らは生き抜くために、市民の嗜好に合わせた料理を作りだし、「アントン・カレーム」や「オーギュスト・エスコフィエ」といった偉大な料理長達によって、数多くに及ぶソースが作り出されて、現代のフランス料理の体系と基礎が築き上げられました。

 

 しかし当時のソースは、煮詰めたスープを“粉と油脂”で“トロミ(濃度)”をつけただけ(現在のベシャメルソースの様な状態)のもので、けっして健康に良いとは言えない“舌に重いソース”でした。

 

 しかし時とともに交通機関も確立されてくると、やがて市民の嗜好も変化し人々は健康に良い食べ物を求めるようになります。

 

 1930年代になると「フェルナン・ポワン」や「アンドレ・ピック」といった有能な料理人が現れると、エスコフィエの精神を受け継いだ彼らと、さらに彼らの弟子である「ポール・ボキューズ」「アラン・シャペル」「ジャン/ピエール・トロワグロ兄弟」「ルイ・ウーチェ」などの彼らによって、『より軽いソース』が作り出され、【ヌーベル・キュィジーヌ】と言われる新しい分野を開拓し、フランス料理界は黄金期を迎えます。

 

 現代に至っては「ジョエル・ロブション」や「アラン・デュカス」などの有名な料理人も現れ、エスコフィエの精神を受け継ぎながら【キュィジーヌ・モデルヌ】と呼ばれる新境地をめざし、今日でもさらなる発展を続けております。

 

 そんなフランス料理の命ともいうべき《本場のソース》の醍醐味を是非味わいに当店までお越しください。そして私の作り出す料理とソースが今お話した時代の中で、どの時代のソースに当てはまるのか、皆様の舌と目で確認して私に教えてください。お時間の取れる時には私も極力皆様のテーブルにお顔を出そうと思っておりますので・・・・・。